中国で過熱する「OpenClaw」ブーム 熱狂の裏で“金脈”を掘り当てたのは誰か

経済 産経新聞 2026年04月05日 13:00
中国で過熱する「OpenClaw」ブーム 熱狂の裏で“金脈”を掘り当てたのは誰か

中国で過熱するAIエージェント「OpenClaw」ブーム。扱いが難しいにもかかわらず、技術的な背景をもたない人々までがクラウドサーバーやLLMに課金している。この熱狂の裏で利益を手にしているのは、ユーザーではない。

ジョージ・ジャンは、話題になっているAIエージェント「OpenClaw」の仕組みを理解していなかったが、これを使えば自分も裕福になれるかもしれないと考えた。中国のSNSインフルエンサーが、OpenClawを使って株式ポートフォリオを管理し、投資判断を自律的に下している様子を紹介する動画を見たからだ。中国の廈門市で越境電子商取引の仕事に携わるジャンは興味を引かれ、2月下旬にOpenClawをインストールして試してみることにした。

ジャンは、最近中国で広がっているOpenClawの熱狂の波に加わった多くの人のひとりである。AIエージェントの使い方を教えるワークショップが全国の都市で次々に開催され、数百人規模の参加者を集めている。テック企業はOpenClawを自社プラットフォームに組み込もうと競い合い、地方政府もこれを使った製品を開発する起業家に補助金を出すことを発表した。3月上旬には、祖父母世代の人々がソフトウェアをインストールするために列をつくる様子の写真がネット上で拡散したほどだ。

テンセントからクラウドサーバーを借り、中国の大規模言語モデル(LLM)Kimiのサブスクリプションに登録したことで、ジャンはOpenClawのエージェントと会話できるようになった。多くの中国人と同じく、ジャンもこのエージェントを「ロブスター」と呼んでいる。

最初はAIエージェントが最新ニュースを基に長い市場分析を素早く生成する様子に感心したと、ジャンは話す。しかし数日が経つと、ロブスターは手を抜くようになり、詳細なレポートではなく市場動向の簡単な概要しか生成しなくなった。ジャンが初日に作成したようなレポートを再び生成するよう指示しても、エージェントは「作業中です」と答えるばかりで、レポートが出力されることはなかったのである。

ジャンは、OpenClawは自分のようにプログラミングの知識がない人のためのものではないと結論づけた。「APIポートを設定する必要があると言われました。ただ、それは技術的な作業で、手順をひとつずつ説明するチュートリアルがないとわたしにはできません」とジャンは言う。最終的にジャンは、ロブスターに株取引をさせることを諦め、代わりにAI業界のニュースをまとめるのに使うようになった。ジャンはその情報を利用して、WeChatで配信するSNS向けコンテンツを量産している。

3月中旬、わたしは中国でOpenClawを使っている何人かのユーザーに、その使用体験について話を聞いた。その結果、技術に精通した利用者とそうでない利用者の間で、意見がはっきりと分かれることが明らかになった。AIに詳しい人はOpenClawを生産性を一変させる存在だと考えているが、技術的な背景をもたない人は、奇跡のように強力なAI製品だと謳われていたものの、実際の使用体験は期待通りのものではなかったと感じている。そして熱狂のバブルが弾けるころには、すでにクラウドサーバーやLLMのトークンに課金してしまっていた。

中国におけるOpenClawの熱狂を、本当の意味で生み出しているのは一般ユーザーではない。その普及により利益を得られる中国企業の方である。テンセント、アリババ、ByteDance、Minimax、Moonshot、Z.aiといった大手テック企業は、AIによる生産性向上の波に乗り遅れるかもしれないという不安を、一般の人々にAIサービスの料金を支払わせるまたとない機会と見たのだ。そして実際に、そこから最大の利益を得ている。

「チャットボットは1回の会話で数百トークンしか使いません。しかしOpenClawは、アクティブなインスタンスが1つあるだけでも1日に数十倍、場合によっては数百倍ものトークンを消費します」と、テックアナリストでニュースレター「Hello China Tech」の創業者、ポー・ジャオは指摘する。OpenClawの新しいユーザーが増えるたびに、24時間LLMのAPI利用料を払い続ける利用者が増えることになる。「だからテンセントの技術者たちは、本社の外にテーブルを出してソフトウェアのインストールを無料で手伝ったのです」とジャオは語る。

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