LINEヤフーのデータを高校教育に活用 探究授業でAI、データ人材育成

経済 日経トレンディネット 2025年07月11日 14:03
LINEヤフーのデータを高校教育に活用 探究授業でAI、データ人材育成

花王でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、現在は下妻第一高等学校・付属中学校の校長を務める生井秀一氏がゲストを招き、企業変革力を身に付ける方法について対談する本企画。第10回はLINEヤフー上級執行役員CDO(最高データ責任者)の佐々木潔氏を招き、LINEヤフーの教育現場への取り組みや探究学習授業、未来のデータ人材の育て方について議論した。

生井秀一氏(以下、生井) 私は花王の販売会社、水戸支店に地方採用で入社しました。当時は同期に負けたくないという気持ちがあり、最年少で部長になろうという意気込みで営業からマーケティング職を経験した後、現在のDX(デジタルトランスフォーメーション)の部署を立ち上げ、DX部長を務めました。

 (LINEヤフーが提供するデータ分析ツール)「DS.INSIGHT」は花王時代にDXの部署をつくったときに導入しましたが、現在はDS.INSIGHTを校内に持ち込んで教育に活用しています。以前行われた成果発表会では、同ツールを使い、バックデータ(根拠)として使っている生徒もいました。

佐々木 潔氏(以下、佐々木) 私はDS.INSIGHTの立ち上げ時に関わっていました。現在のDS.INSIGHTは、かなり進化しています。直近ではAI(人工知能)を含めて、グルーピングやサジェスト(提案)などの機能が追加されています。今回、生徒さんに使っていただいるようですが、高校生でDS.INSIGHTを使いこなすのはすごいいことだと思います。

 私たちの高校時代と変わり、現在は大きく状況が変化したと感じます。また、花王でのノウハウを生で教えられるのは、素晴らしいと思いました。近年は、民間企業から教員や校長の採用を積極的に行っている県が多いのでしょうか。

生井 はい。現在の茨城県知事は民間企業に勤めた経験があったこともあり、茨城県のトップ校は中高一貫にし、経営者を民間から招く取り組みをしています。私もその考えに共感しています。

 茨城県は公立の中高一貫校の民間採用教師が多く、教育業界では注目されている県だと思います。中高一貫校は高校受験のための勉強がなくなるため、より企業訪問や探究学習授業に時間を充てることが可能です。

佐々木 3年間の学生生活の中で受験勉強に1年間を費やすと、探究学習に取り組む時間が少ないと感じるかと思います。新しいことに取り組む中で、SNSも頻繁に活用されていますが、壁などはありましたか。

生井 当校は127年の伝統があり、新しいことを取り入れるのは苦労していますが、時代の変化への対応がミッションだと考えています。

 現在は学校の強みを生かしながら新しいものを入れる、企業でいう両利きの経営の理論に近いことを学校に導入することを心がけています。また、教員たちは“個人事業主2のように働く傾向があり、横の連携が弱かったがめ、現場との連携に苦労したこともありました。現在は教員のマネジメントや新しいことの導入だけではなく、学校のブランディングにも取り組んでいます。

佐々木 生井さんは教科ごとに縦割りになっている体制を、横で連携すること意識されたようですが、今回の探究授業というのはどのように進めたのでしょうか。

生井 2022年度から文科省の教育課程に「総合的な探究の時間」が正式に組み込まれました。週一回の探究学習授業が必須となっていますが、教員たちは授業の進め方が分からないことから、実際はテスト勉強などの時間に充ててしまっている学校が多い傾向にあります。

 この状態では、本来の探究学習の目的を果たせないため、私のような民間校長が入って、探究授業を進めることを試みました。

 探究学習は生徒にテーマを与えて、自分で考えて発表する形で行います。その過程で、DS.INSIGHTを使っています。中には「推し活と心理学」というテーマを扱った生徒がいましたが、DS.INSIGHTで「推し活」と検索すると、それに関連するワードが多く表示されます。

 (特定の検索キーワードに対して、同時に検索される検索キーワードをネットワーク図を使って可視化する機能)「共起キーワード」を使った結果、赤や青などの色を表す単語が出てきていることから、「推し」を表現する手段で、色が使われている傾向があることが分かりました。その生徒はアイドルの応援グッズに色が使われていることを根拠に「色の多様性は推し活と関連が深い」という仮説を導き出しています。

 あくまで一例ですが、生徒にとっては「データがあると仮説の説得力が強まると」いう貴重な体験ができました。

 また、探究学習は答えが用意されていないため、自主的に学ぶスタイルへの転換が求められています。マーケティングで例えると、プッシュ型からプル型への転換です。

佐々木 今回は当社から複数名が学校に伺い、ツールの使い方のレクチャーや、生徒の発表への参加、ビジネス視点からのコメントなどを行いました。先生や生徒さんからの感想はいかがでしたか。

生井 生徒だけでなく、教員向けの研修も行っていただきましたが、非常に新鮮だったと思います。教員たちからは「面白い」という前向きな意見が出ました。教員たちが「自主的に教育を行っていい」と思えるような動きが見えてきたのも、非常にうれしいです。

 生徒たちも、知っている企業で活躍している方から直接話を聞けるため、本当に楽しんでいました。

 「先生たちが明るくなった」「学内の雰囲気が明るくなった」と言う声もあり、探究学習の成果が伝わると実感しました。やはり、学校という組織の内側や教員が変わらないと、生徒たちがた楽しんで学べる環境は提供できないと考えます。

 今回は多くの業界の企業にご参加いただきましたが、花王時代に関わった方々とのご縁から実現できました。

この記事は会員限定(無料)です。

ビジネス視点からのゲーム情報を発信日経Gamingニューズレター(メルマガ)

 国内外を問わず、ゲーム市場の最新動向、企業の経営・マーケティング戦略、AI(人工知能)やネットワーク、システム運用といった技術の最前線、著名な経営者やクリエイター、プロゲーマーのインタビューなどの情報をお届けします。また、東京ゲームショウをはじめとする国内外のゲームイベントについてもリポートします。登録は無料!  ぜひ、ご登録ください!

関連記事

記事をシェアする